はばたき情報局

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【天童壬】社会的スティグマと信じること【考察】

はい、今回はGS1のDS版で追加された隠しキャラ、天童壬(てんどうじん)君の考察をしていきます。
天童君ルートのテーマは何だろう、と考えたところ、タイトルにもあるように「社会的スティグマ「信じること」かなと思いました。この二点から彼を深めていきます。

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1.天童壬と社会的スティグマ

まずは、社会的スティグマについて簡単に説明します。

社会的スティグマ(Social stigma)とは、一般と異なるとされる事から差別や偏見の対象として使われる属性、及びにそれに伴う負のイメージの事を指す。社会的スティグマは特定の文化、人種、ジェンダー、知能、健康、障害、社会階級、また生活様式などと関連する事が多い。

引用元:Wikipedia「社会的スティグマ

 社会的スティグマの意味、なんとなくイメージできたでしょうか。スティグマは日本語で「烙印」と訳されることが多いです。これと似たような言葉として日常的によく使われるのがレッテルですかね。
さて、天童君の社会的スティグマは何かというと、「金髪」「不良」「喧嘩」「羽ケ崎学園(成績は中の下の下(※本人談))」…このあたりになるのではないでしょうか。

彼は、中学生の時にできた友人(しかも天童君曰く初めての友人らしい)の影響でグレ始めたようです(イベント「喫茶店で遭遇」でこの話を聞くことができます)。中一くらいまで成績はトップだったようですが、初めてできた友人がグレ始めた影響で彼もずるずると流されていったということらしいです。
それからは「羽ケ崎学園」に入学し、成績はその中でも中の下の下まで落ちます。中一までは優等生だったということもあって、その落差、「金髪」や度重なる喧嘩等々によって親や教師からの信頼を失うことになりました。そのせいか、出会って間もない頃は主人公に対して、「はば学のお嬢さん」「優等生」と悪態をついています(ちなみに、はばたき学園は有名進学校という設定になっています)。「自分はどうしようもない出来損ないの人間だ」「地まで落ちてしまったから何をしようが大丈夫」「主人公と自分は別世界の人間なんだ」そう思い込むことによって、安心感を得ようとしていたのでしょう。

しかし、主人公は天童君の挑発に乗り、試験前にもかかわらず遊びに全力で付き合いました。そんな主人公を見て、こんな偏見もなく、自分と接してくれる人がいるのか、と主人公に対する目が変わります。


彼が社会的スティグマを意識している場面は文化祭準備の時の会話でも見られました。

天童君と主人公が校門で仲良さそうに会話をしているのをみた女子生徒二人がこんな会話をします。

女子A「ねぇねぇ、あの子、ナンパされてんのかな。意外と付き合ってたりして。」
女子B「そういえば、この前も……イヤ~、マジメそうなのに見かけによらないねぇ。」


真面目で優等生な主人公が天童君と関わっているのを見て”意外”とか”見かけによらない”とか言っています。これは、天童君を見かけだけで”不良”だと判断しているとも取れます。これこそが社会的スティグマ。金髪、ワルそう、羽ケ崎学園の制服(羽学が悪いわけではなく、単にはば学>羽学という序列が勝手に作られているだけです)という見かけで、勝手に判断される天童君。それに加えて、自分のせいで主人公にまでよくない評価が下されてしまっている…。自分だけならまだしも、主人公にまでそんなイメージを勝手に持たれるのは許せない。そんな思いが、文化祭当日の「黒髪」に表れているのでしょう。

 

自分だけならまだ…という思いが天童君の中であったのは確実かなと思います。だからと言って、天童君も自分がこのままでいいと思ってるわけではないと思います。主人公に対して勉強はちゃんとした方がいいとか言っていますし、喧嘩自体も自分の意志と言うよりかは友達に流されて…という側面が強いような語りをしています。天童君は自分の望むように振舞うことはできないながらも、「本当はこうした方がいいんだろう」という彼なりの価値基準はちゃんと持っているように感じました。だからこそ、彼は「ちゃんと勉強して大学に行こう」と決意できたのだと思います。

 

2.信じるということ

「信じる」これが天童君ルートの一番のテーマなのかなと思います。

社会的スティグマのところでも述べましたが、彼は中一の頃まではトップの成績をとっていました。その頃は、成績がいいことで親や先生から褒められ、信頼されていたのだと想像できます。しかしながら、この信頼と言うのは非常に頼りないものだという事を天童君は自覚するのです。中学生の時、初めてできた友達に半ばつられるような形でいわゆる”不良”になっていきました。そうなることで、今まで親や先生から得られていた信頼を一気に失うのです。天童君自身が信頼されていたのではなく、”成績の良い”天童君が信頼されており、もっと言うと、”成績がいい”という属性だけで信頼されていたとも取れます。そんな事実を突きつけられてしまったら、自分から人を信じることが難しくなります。
しかしながら、彼にはたった一人の友達がいました。その友達は、いつまでも変わらず友達でいてくれました。天童君にとっての初めての友達…天童君自身も彼がどうなろうと友達でい続けたいという思いが強かったのでしょう。グレていく友人を見ても、天童君はずっと友達でい続けようとしました。それは、天童君が友人のことを本当の意味で信頼し、心情を汲み取っていたからだと思います。天童君はすごく相手の気持ちを思いやれるし、絶対に裏切らないという強い信念、優しさを持った子なんだなと、プレイしていて思いました。逆に信念が強すぎるからこそ、優しさがときに先走って自分よがりになってしまう場面もあるのですが…。それもきっと、大人から裏切られた反動なのだと自分は解釈しています。

彼は裏切られることを極度に怖がっているように見えました。彼の友人や主人公に対する「信じる気持ち」はその裏返しとも取れます。裏切られるのが怖いから、信じる。もちろん、信じたいという気持ちも混ざっているとは思うのですが、やはり人は簡単に裏切るものだと学習してしまった彼がそう簡単に人を信じるのは難しいような気がします。だから、自分はお前のことを信じてるから、俺のことも信じてくれ。そんな悲しい叫びのように聞こえる場面も結構ありました。

これを踏まえた上で、文化祭イベントの教会での二人の会話を見ると、すごく泣けてきます。主人公から「教会の伝説」を聞いた天童君は、少女漫画の様なメルヘンさのあるその伝説を笑い飛ばすのですが、最終的には

「オマエは信じてんだもんな。よし、わかった……。」

と主人公の語る伝説を信じることにしたのです。彼にとって、おそらく伝説自体はどうでもいいもので、「自分の好きな人である主人公が信じている伝説」だから信じることにしたのだと思います。どんなに馬鹿げたことでも、信じる。これは、主人公が天童君に対してしてきたことでもあるのです。「不良」の属性をもった天童君を主人公は信じて偏見なく接してくれたし、高校の成績が中の下の下である自分が大学受験を目指すということもばかにせずに、絶対にできると信じてくれました。主人公の言う「教会の伝説」を信じることは、彼にとっての主人公への恩返しであり、必死の愛情表現だったのだと自分は考えています。本当に泣けます…。

 

受験日当日、友達から連絡が入った天童君は、受験を捨てて友人を助けに行く選択をします。今まで頑張って勉強してきたうえに、主人公と一緒に合格しようと約束した天童君のことを想うと本当に辛くなるのですが、ここで友人を助けに行く選択をした天童君は「人を信じる」ということに本当に全力なんだなと改めて気付かされます。私は、さらに彼のことを信じたいと思いました。これが信じる力ですね。信じる力は相互作用を生む。主人公との約束は破ってしまうことになるのですが、自分にできる信じる姿勢を彼は示してくれました。主人公に対し、「お前はちゃんと受かれ」と言うのです。その後、教会での告白でも、自分なりに主人公との約束を守ったことを伝えてくれます。友人を助けに行ったとき、天童君は自分から手を出すことなく、喧嘩相手に一方的に殴られたと言います。一方的にやられただけだから喧嘩にならないよな、と。ちゃんと「もう喧嘩はしない」というもう一つの主人公との約束を彼なりに守っていたのです。私はこの事実を知った時、また泣きそうになりました。これが誠意なんだな、と思いました。

 

本当の意味で人を信じるとはどういうことなのか、そんなことを考えさせられる素晴らしい話でした。

 

最後に、彼は主人公の為に自分は変わる!というGSキャラの中でも少し珍しいタイプなのかと思います。相手のために変わる、と言うのも一つの愛情表現なのだと思いますが、個人的にはその愛にはまだ「自分のため」というエゴが含まれていて、成熟した愛とは言い難いのかなと思っています。しかしながら、付き合う中で主人公から信頼されるという経験をたくさん積むことによって、「無理に変わる必要はないんだ」と思えるようになるんじゃないかと思っています。歩み寄ることと、相手の為に(無理して)自分を変えることはちょっと違うと思うのです。(そういう理由で、自分は金髪EDの方が好みだったりします)

天童君はちょっと暴走してしまう節がありますが、主人公と信じあう経験をしていくなかで少しずつ落ち着きが出てくるのではないかなと勝手に想像しています。彼自身、人を信じるというブレない芯を持っているので、きっと幸せな恋愛ができると思います。

 

長くなりましたが、以上で天童君の考察を終わります。
最後まで読んでくださってありがとうございました!!